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2020.02.13

漂流物から散在性ごみまで、琵琶湖のごみ問題

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漂流物から散在性ごみまで、琵琶湖のごみ問題

(真野浜に漂着し回収されたゴミ 写真提供:きよみ荘オーナー山田さん)

 美しい湖国、マザーレイク。「琵琶湖を守る滋賀県民の環境問題への意識は高いと強く思います」と、話してくれたのは滋賀県琵琶湖環境部循環社会推進課循環調整係の枝宏樹(えだひろき)さん。県をあげていろいろなゴミ対策を執り行い、企業や県民との連携をしながらゴミ問題に取り組む滋賀県の取り組みや実情などを枝さんにお伺いしてきました。

琵琶湖とゴミ

漂流物から散在性ごみまで、琵琶湖のごみ問題

(真野浜 写真提供:きよみ荘オーナー山田さん)

 滋賀県民が大事にしている琵琶湖は、近畿の水がめでありとても重要です。長い歴史の中で琵琶湖を守るために市民運動が行われた過去もあります。また、年に数回県民が一斉に環境保全のためゴミ拾いや清掃をする日も決まっているそうです。

 しかし、現在も琵琶湖には流れ込む大小の河川を通じて散在性ごみが流れ着き、それらが湖岸のゴミとなり、美しい景観を損なうとともに、水鳥などの生物にも影響を及ぼしているそうです。

 実際にどのようなゴミがどれだけ琵琶湖にあるのか、どのような手法で調べているのかを枝さんに詳しく聞かせてもらいました。

琵琶湖岸漂着物等の調査と実態

漂流物から散在性ごみまで、琵琶湖のごみ問題

(画像提供:滋賀県琵琶湖環境部循環社会推進課循環調整係枝さん)

 調査は、平成26年度に琵琶湖の6地点で実施されました。

 調査期間は平成26年5月から10月の6か月間。調査の最初の月に漂着物を一掃した上で、概ね1か月ごとに新たに漂着した流木・竹、植物片(よし等)・水草及び散在性ごみ等を回収、分類し、記録票に量や種類を記録しました。

 分類は「プラスチック、発泡プラスチック(発泡スチロール)、布、ガラス、陶器、金属、紙、段ボール、ゴム、木(木材等)、その他、自然物」の11種類の大分類と「ボトルキャップのふた、アルミ製飲料缶等」の56種類の小分類。

 バーベキュー後にそのまま放置されたごみ等、外形上明らかに漂着物ではないものについては回収を行うものの記録は行わないそうです。

 散在性ごみは大分類の種類別に分けると、総領48.6㎏のうち、プラスチック類が17.3㎏で35.6%、ガラス、陶器類が9㎏で18.5%、ゴム類が8.7%で17.8%となっており、3種類で約70%を占めるという結果に。

 小分類では総領1,224個、たばこの吸い殻(フィルター)は577個で47.1%、ペットボトルの キャップ・ふたが148個で12.1%、2リットル以下のペットボトルが76個で6.2%、アルミ製飲料缶が68個で5.6%、飲料容器(ガラス製)が59個で4.5%となっていました。

漂流物から散在性ごみまで、琵琶湖のごみ問題

(画像提供:滋賀県琵琶湖環境部循環社会推進課循環調整係枝さん)

 たばこの吸い殻や飲料系容器が80%以上を占めていることから湖岸や河川敷でのレジャーや活動の際にポイ捨てや放置されたものが相当数含まれているのではないかと推測しているとのことでした。

散在性ごみについての取り組み

漂流物から散在性ごみまで、琵琶湖のごみ問題

 さらに、滋賀県での取り組みについて枝さんに聞くと、平成4年に「滋賀県ごみの散乱防止に関する条例」(通称クリーン条例)を定めており、「2万円以下の罰金規定もあります。」と教えてくれました。

 実際のところ罰金を徴収するというよりは、県民、事業者、土地の占有者及び県が一体となって、ごみの投捨手による散乱を防止する事を目的とされているそうです。

 クリーン条例で設けた年3回の「環境美化の日」を基準として5月30日「ゴミゼロの日」・7月1日「びわ湖を美しくする日」・12月1日「県下一斉清掃運動」を県下全域を対象に実施。

 また、「環境美化監視員」による監視や啓発活動を行い、街頭、駅前、観光地等で、ポイ捨ての有無やどこに何がどれだけあるのかを調べてくれています。その他取り組みとしては、パトロールや、台風通過後に湖岸漂着物状況調査の実施なども。

 また、県と合意を交わした各団体が地域活動を実施。その数は平成31年3月末で386団体に及ぶそうです。

 ごみ減量と環境美化に関する標語、ポスターの図案募集や企業と協定を結んだレジ袋削減の取り組みでは、平成25年4月から協定締結事業者の店舗で「レジ袋無料配布中止」を実施し、無料配布中止事業者は201店舗、レジ袋無料配布中止以前の平成24年に比べて約45万枚の削減という成果が出たそうです。

ポイ捨ての内容と時代背景

漂流物から散在性ごみまで、琵琶湖のごみ問題

 環境美化監視員による定点観測調査結果の推移には時代背景などが色濃く反映しているように思えます。と、枝さん。

  環境美化監視員は「滋賀県ごみの散乱防止に関する条例」18条で設置を定めたもので、現在7名雇用されており、ごみの監視や啓発活動を実施しているそうです。

 調査開始の平成15年の「100mまたは1000㎡1日あたりのポイ捨てやごみの量」では、38地点の平均個数は吸い殻が21個、次いで紙くずが9個。これが平成30年になると吸い殻が8個、紙くずが1個と減少しているそうです。

漂流物から散在性ごみまで、琵琶湖のごみ問題

(画像提供:滋賀県琵琶湖環境部循環社会推進課循環調整係枝さん)

 調査開始時から時代が進み、禁煙、分煙、たばこの値上がりや路上喫煙禁止条例の制定、ペーパーレス化などの影響も否定できないとのこと。

 飲料容器で見ると平成15年で1日あたり2個だったものが平成30年には0個。この期間の間に、中身をこぼさず持ち歩けるペットボトル入り飲料が主流となり飲料容器自体のゴミが減ったのではないかという予測もしています。

ポイ捨てをする側になるか拾う側になるか

漂流物から散在性ごみまで、琵琶湖のごみ問題

 県では昭和46年に発足した「美しい湖国をつくる会」とともに県内各地で清掃活動、開発活動もしています。

 平成30年度の実績として、5月30日のゴミゼロ大作戦では参加延べ人数40841人が参加、回収したごみの量は164トン。琵琶湖を美しくする運動として7月1日には参加延べ人数124,515人、回収したごみの量は959トン、12月1日の一斉清掃運動では参加延べ人数100,839人、回収したごみの量545トンにもなりました。

 これだけ清掃活動や美化に携わる方が多く、回収したごみの量も大変多くあるにもかかわらず、毎年また散在性ごみが多数見受けられるそうです。

 一部では他府県からの観光客のゴミも考えられ、レジャー客が忘れて行くということもあるそうですが、県の取り組み、県民の取り組みに加えて、一人一人がゴミをきちんと持ち帰るというモラルが大きく関係しています。モラルを持って行動してほしいと最後に枝さんは締めくくってくれました。

 ポイ捨てをする人がいなくなれば、ごみ拾いをすることもなくなります。散在性ごみは、無くそうと思えばなくなるのではないでしょうか。

 ポイ捨て禁止の看板を立てる、監視員を置く、条例を作るということも大事かもしれませんが「誰も見ていないから」「誰かが片付けるだろう」という甘い気持ちを捨て、各自が持ち帰ることできれいな環境が保てること、環境にも優しいこと、子どもや孫たちに綺麗な地球を残し続ける事を考え行動する人が増えることを筆者は願います。

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ライター
岩城 美穂

1977年生まれ。
片付けの仕事を通して、環境問題やSDGs、プラスチックフリーやゼロウエイストに関心を持つ。
片付けコラム執筆、環境問題に配慮したライフスタイルの提案や片付けコンサルタント、セミナー講師をしています。