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2020.03.13

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

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琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

(「琵琶湖八珍」写真提供:からっ風)

 大津市打出浜、京阪石場駅の近く、旧東海道沿いにある「からっ風」はアットホームな居酒屋さん。田中さん夫妻とその長男夫妻で営業しています。琵琶湖八珍をはじめとする魚介類や、近江の地酒、地場野菜など滋賀県産の食材を生かしたメニューがたくさん。「こういうお店に来たかった」と感動するお客さんもいるそうです。

 お店のヒストリーやメニューについて、長男の田中大士(たなかもとし)さんにお話をうかがいました。

からっ風ヒストリー

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

 からっ風の前身は明治初期から続く八百屋さんでした。同じ石場の地で営業を続け、大士さんで6代目になります。昔はお店のすぐそばが琵琶湖で、周囲は別荘地だったという話にも歴史が感じられます。

 平成2年(1990年)に居酒屋に転身。当初は八百屋時代に販売していたお惣菜がメインで、徐々に魚介類やその他のメニューを増やしていったといいます。カウンターで出迎えてくれる招き猫は八百屋さん時代からお店を見守っているそうです。

 ちなみに「からっ風」という店名は大士さんのお母さんの故郷・群馬に伝わる言葉「かかあ天下とからっ風」に由来しています。

 

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

 現在は大士さん夫妻が主に調理を担当し、両親が接客を担当します。人情味あふれる楽しいトークも魅力で、自宅にいるような安心感が味わえると好評です。韓国から来たお客様から「オモニ(お母さん)の店みたい」と言われたことも。

 よく来店するのは近隣の官公庁や企業の方々で、県外からのお客様をもてなすために使われることもあります。滋賀ならではの食材が食べられるとあって、「滋賀にこんな料理があるとは知らなかった」と驚かれることも少なくないそうです。

 からっ風は滋賀県の「あってくれてありがとうと言いたい滋賀の個店・企業」にも選ばれています。紹介動画は滋賀県公式YouTubeチャンネルで配信中。田中さん一家の温かい雰囲気が伝わります。

琵琶湖八珍とは?

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

(大士さん手書きの琵琶湖八珍紹介)

 からっ風を紹介する上で欠かせないのが琵琶湖八珍の存在です。琵琶湖八珍とは、琵琶湖に特徴的な8つの魚介類、ビワマス、ニゴロブナ、ホンモロコ、イサザ、ゴリ(ウロリ・ヨシノボリ)、コアユ、スジエビ、ハスのこと。2013年、県立安土城考古博物館が来場者への湖魚料理人気アンケートをもとに、供給量なども考慮して決定されました。

 琵琶湖八珍の立ち上げ時にはからっ風で検討会が開かれたほどで、琵琶湖八珍発祥の店と言っても過言ではないかもしれません。ウナギやセタシジミも候補に挙がっていたものの、もっと琵琶湖ならではの魚介を選定しようということで、現在の8種類に決まったそうです。

 からっ風は琵琶湖八珍マイスター登録店のひとつでもあります。琵琶湖八珍マイスターとは、琵琶湖八珍の普及に努めている事業者が登録できる制度。琵琶湖八珍の積極的な取り扱いや、接客における琵琶湖八珍の情報伝達、琵琶湖八珍ロゴマークの積極的な使用がその条件です。

 こちらのお店では琵琶湖八珍の積極的な取り扱いはもちろん、情報提供にも力を入れています。店内には琵琶湖八珍のそれぞれについて大士さん手書きの説明書きがあり、目を引きます。料理を提供する際には使われている食材の特徴を詳しく説明。大士さんは「うっとうしいかもしれませんが」と謙遜しますが、丁寧でわかりやすい解説は料理をより味わい深いものに引き上げてくれます。

参考URL:琵琶湖八珍ウェブサイト

バラエティ豊かな琵琶湖の魚介類

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

カウンターに座ってまず目に入るのが豊富なメニュー。見ているだけでも楽しく、ついついたくさん注文してしまいそうです。それぞれの食材には産地が書かれていて、滋賀県産へのこだわりが感じられます。

 中でもからっ風を代表するのは琵琶湖八珍をはじめとする魚介料理。湖魚は飴炊きで売られていることが多いのですが、からっ風では調理法が多岐にわたっています。コース料理にしたときに飽きないよう、刺身、煮物、塩焼き、かき揚げなど、趣向を凝らした料理を提供。お客さんのリクエストに応じて作ったメニューも多いと言います。

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

(「エビ豆カレー」写真提供:からっ風)

 見た目のインパクト絶大なのがこちらのエビ豆カレー。堅田の漁師さんたちから「新しい食べ方を考えてほしい」とのリクエストを受けて開発しました。ところがカレーはあまり噛まずに食べる人が多く、エビが口に刺さって痛いという声が。エビを揚げてから調理することで問題は解消され、今では人気メニューのひとつです。

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

(「ハスの塩焼き」写真提供:からっ風)

 ハスはコイ科の魚で琵琶湖八珍のひとつ。小骨が多いため、断ち切って骨ごと食べます。お酒にハスを入れる骨酒も人気。お酒に出汁が出て、深みが増します。飲み終わったあとハスを丸ごと食べる人もいるそうです。

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

(「鮒のジョキ(刺身)」写真提供:からっ風)

 こちらは珍しいフナの刺身。皮ごと細切りにする際にジョキジョキいうので「ジョキ」とも呼ばれます。フナはもともと赤い色で、洗うと白くなり、コリコリした食感が特徴です。

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

(「自家製鮒ずし」写真提供:からっ風)

 ふなずしは自家製。2011年に滋賀県水産課の指導によって作りはじめました。こだわりは丁寧に洗うこと。毎年少しずつ作り方を変えて、よりおいしいふなずしになるよう試行錯誤しているそうです。

 ふなずしの頭と尻尾を使った「ふなずしのタタキ」も人気メニューのひとつ。なめろうのようにして食べるとお酒によく合います。

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(「鮒の煮付け」写真提供:からっ風)

 刺身やふなずしだけでなく、定番の煮付けも用意しています。山椒たっぷりの鮒の煮付けは湖魚に苦手意識がある人でもおいしく食べられると評判だそうです。

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

(「ニゴイのおとし」写真提供:からっ風)

 ニゴイは泥臭く、骨が多いため、捨てられてしまうことが多い魚でした。すぐに鮮度が落ちてしまう特徴があり、京都に着くまでに腐ってしまうことから「京知らず」と呼ばれたほどです。からっ風ではハモおとしを意識し、ニゴイのおとしとして提供。むにゅむにゅした独特の食感が魅力です。

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

(「ヒガイの魚田楽」写真提供:からっ風)

 ヒガイは魚へんに天皇の「皇」で、「鰉」と書きます。一説には明治天皇が滋賀県を訪れた際、県庁で召し上がって気に入られたのが由来とされています。その後も明治天皇の下命により、ヒガイを琵琶湖から東京に運んだ記録が残っているそうです。ヒガイは漁獲量が少ない貴重な魚。食べる機会があったら明治時代に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

参考:国立国会図書館レファレンス協同データベース

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

(「大中水産での仕入れの様子」写真提供:からっ風)

 湖魚は近江八幡市の大中水産で仕入れます。季節によって獲れる種類が違い、漁獲量が少ないものもあります。この記事で掲載している全ての料理が食べられるわけではないので、目当ての料理があるときは事前にお店に確認することをおすすめします。

滋賀県産の日本酒

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

からっ風では滋賀県産の日本酒を取り揃えています。甘みが強いのが近江の地酒の特徴。店内にはそれぞれのお酒の特徴を示す説明書きが貼ってあり、どのお酒も飲みたくなること間違いなしです。

・竜王 松の司(まつのつかさ)
・木之本 七本槍(しちほんやり)
・大津 浅茅生(あさじお)
・五個荘 一博(かずひろ)
・能登川 近江藤兵衛(おうみとうべえ)
・土山 初桜(はつさくら)
・高島 不老泉(ふろうせん)
・高島 萩の露 里山(はぎのつゆ さとやま)
・甲賀 忍者 Ninja

 中でも特に人気があるのは松の司と七本槍。大士さんのおすすめは浅茅生です。浅茅生はお店からほど近いナカマチ商店街にある平井酒造で製造されています。今後は琵琶湖ワインも取り扱っていきたいとのことでした。

滋賀県産へのこだわり

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

からっ風ではメインとなる湖魚料理と地酒以外にも、さまざまな滋賀県産食品を提供しています。前身が八百屋さんということもあり、滋賀県産野菜も豊富。取材に伺ったこの日も大士さんの両親が地元野菜を抱えて帰ってきました。

 お店で使っているお米はすべて滋賀県産のみずかがみ。生産農家の森さんが大津市の大石龍門で生産しているお米を使用しています。

 ほかにも滋賀県産大豆で作った豆腐料理、安土大中のトマトスライス、近江八幡の赤こんにゃく、竜王の鶏肉・卵、信楽の朝宮茶など、まさに滋賀県産食品のフルコースが味わえます。

お店の情報

琵琶湖八珍発祥の店!?大津市石場「からっ風」は滋賀県の食材を堪能できる居酒屋さん

現在、昼の営業はお休みで、夜のみの営業となっています。

 店内は全席禁煙。カウンター席に加えて座敷席もあり、子ども向けの絵本も置かれていました。大勢で宴会したいとき、ファミリーで湖魚料理を楽しみたいとき、一人で飲みたいときなど、さまざまなシーンに利用できるお店です。

 滋賀県の食材を扱うアンテナショップなどからもコラボの依頼があるものの、湖魚は足が早いため、店外で取り扱うのが難しいそうです。ぜひ足を運び、ここでしか食べられない郷土料理を味わってみてください。

【営業時間】
平日 17:30~22:30
土曜 17:30~21:30
※お料理のラストオーダーは終了40分前

【電話番号】
077−522−4068

【所在地】
大津市打出浜6-5

※この記事は2020年3月3日取材時の情報です。最新の内容はお店にお問い合わせください。

宮島ムー
ライター
宮島ムー

大津市に住む主婦。地域ブログ「オオツメモ(https://otsu.muumemo.com)」は滋賀Web大賞2016優秀賞を受賞。趣味は読書と編み物。