絶滅危惧種「ハリヨ」を守ろう!地域ぐるみで保全の取り組み
(画像:米原市醒井地蔵川)
「ハリヨ」は、5~7cmの硬骨魚綱トゲウオ科の淡水魚で、背に3本、腹に1本、腹側尻尾に近い部分のヒレ(臀鰭)前に1本のトゲを持っています。水温15~20℃の水草が豊富な清流に生息し、水生昆虫やプランクトンを食べるそうです。
現在、自然分布が確認されているハリヨは滋賀県北東部の「近江ハリヨ」・岐阜県南西部の「美濃ハリヨ」だけですが、以前は三重にも生息していたそうです。「近江ハリヨ」は、遺伝子分析で伊吹山系の「北近江繁殖群」と湖東平野北部域の「東近江繁殖群」に分けられていますが、両生息地でどちらの繁殖群も確認されています。
ハリヨは観賞用に捕獲され生息数が減っており、環境省レッドリストで、ごく近い将来に野生種が絶滅する可能性がとても高い「絶滅危惧ⅠA類」に指定されています。
滋賀県は米原市醒井・地蔵川の全域を「生息・生育地保護区 地蔵川ハリヨ生息地保護区」に指定し、水温・水質・流れの速さ、湖底環境や石組護岸の維持を行っています。
しかし、2008年に地蔵川ハリヨと北海道イトヨ(川と海を行き来するハリヨの近縁種)の交雑が進んでいたことが判明。淡水魚類の専門家である岐阜経済大学 森誠一教授は、中部地方環境事務所 生物多様性インタビューのなかで交雑したハリヨを「モンスターハリヨ」と呼んでいます。
純粋なハリヨは地蔵川から消えたと思われましたが支流で発見され、醒ヶ井養鱒場やハリヨの研究をしている小中学校などに保護されたそうです。
醒ヶ井養鱒場には「梅花藻 ハリヨ池」があり、ガラス越しに観察できます。藻が茂る前の3月頃が観察しやすい時期だそうです。
地蔵川は梅花藻の群生地でもあり、夏になると観光客が多く訪れ、ハリヨ以外にタカハヤ、カジカも生息しています。
専門家や行政関係者による「ハリヨ問題検討会」は、地蔵川から「モンスターハリヨ」を取り除き、保護している個体や琵琶湖博物館で繁殖している個体を野生に返す計画を検討中です。また、地元小中学校でもハリヨ交雑問題を学習活動に取り入れ、地域理解を深める活動も行うそうです。
ハリヨの保全活動は企業でもおこなわれ、旭化成守山製造所 は1957年創業当時にハリヨの生息する池が敷地内にあったことから、地域環境保全の取組みとして、2016年に繁殖させたハリヨを製造所内の保全池に放流し、維持管理をしているそうです。

京都の海のまちに生まれ、大学で千葉へ。一度は都内で就職するも、結婚を機に滋賀に住むことになりました。現在は彦根で一男一女を育児中。ママコーラス副代表など、新しいことにチャレンジしています。
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当法人役員のエッセイが日本経済新聞全国版に掲載されました