地球がどんどん暑くなる!! 『緩和策』と『適応策』で温暖化を防止せよ
(フローティングスクール事前学習プログラム 守山小学校温暖化出前講座 「公益財団法人淡海環境保全財団」提供)
地球温暖化の危機が叫ばれはじめてから久しいですが、近年さらに温暖化が進み、危機が迫っています。日本だけでなく世界各国が一体となってより一層の対策を行う必要があります。
地球温暖化によって地球に、そして滋賀県や琵琶湖にどのような影響が及んでいるのでしょうか。温暖化が進む地球の今と今後について、また地球温暖化防止・対策のために、私たちができることはあるのか、公益財団法人淡海環境保全財団滋賀県地球温暖化防止活動推進センター技術アドバイザーの山中直(やまなか すなお)さんにお聞きしました。
2100年は年間平均気温が5℃も暑くなる!?
(イオンモール草津での温暖化出前講座 「公益財団法人淡海環境保全財団」提供)
世界の年平均気温は100年あたり約0.74℃の割合で上昇しており、とくに1990年代なかば以降は高温化が進んでいます。さらに日本では世界よりも上昇率が高く、世界平均を上回る100年あたり約1.24℃の割合で気温の上昇が進んでいるなど、より温暖化が深刻だと考えられます。
このまま温暖化を放置していたらどうなるのでしょうか。山中さんは「環境白書」などの資料を元に「このまま対策をしないと、2100年には今より最大4.8℃も平均気温が上がってしまいます」と教えてくれました。最も温暖化が進んだ場合、2.6~4.8℃ほど平均気温が上昇してしまうと試算されているのです。しかし世界中の人々が厳しく努力して温暖化の抑制に成功すれば、0.3~1.7℃の上昇に抑えられると考えられています。
問題は「世界中の人々が今以上に厳しい対策をする」という前提があってなお、0.3℃以上は温暖化してしまうという試算です。今までとあまり変わらない生活を続けていれば、年間5℃近くも平均温度が上がってしまうということでもあります。最悪の未来を回避し、できるだけ最善の未来へと近づくように、ますます温暖化対策に力を入れる必要があります。
滋賀県にもじわり 迫りくる温暖化の影響
(イオンモール草津での温暖化出前講座 「公益財団法人淡海環境保全財団」提供)
温暖化が進むとどうなるのでしょうか。海面上昇や洪水の増加、水不足、熱中症や感染症の蔓延などの危険が増すなど、人々の生活にも生物にも、多大な影響を及ぼすと考えられています。近年台風の被害が大きくなっているのを感じる方も多いでしょう。夏の異常な高温、ゲリラ豪雨の増加、渇水や増水もあります。大雪が記録されたり、例年は雪が降る地域に雪が降らなかったりするなど、各地で異常気象が報告されています。日本だけでなく、世界中で気象の変化が生じ、人々を悩ませています。このような異常気象も、温暖化がその一因ではないかと考えられています。
滋賀県でも温暖化の影響が出始めています。たとえば桜の開花は50年あたりでおよそ4日早くなり、紅葉の時期は10日以上遅くなっています。また以前は沖縄や台湾あたりでしか見られなかった南方系の蝶「ツマグロヒョウモン」の生息域が増えるなど、影響がじわりと迫っているのです。
琵琶湖の「全循環」問題もあります。「全循環(全層循環)」とは、冬に酸素を豊富に含む表層の水が冷やされて沈み込むことで対流が起こり、表層の水と湖底の水が完全に混ざり合う現象を指します。表面の水と底の水が入れ替わることで、湖底にも酸素が供給されます。
全循環の条件は、真冬の冷え込みによって琵琶湖の水がグッと冷やされること。暖冬の年には冷えが足りず、全循環が起こりにくくなります。これまでも2006~2007年、2015年~2016年の冬など、全循環がなかなか怒らず、「戻り寒波」によって3月後半にやっと全循環した年もありました。そしてついに2019~2020年の冬には全循環が起こらず、湖底の低酸素化、そして低酸素化が湖底の生物にもたらす影響が危惧されています。さらに温暖化が進むと、恒常的に全循環が阻害される懸念もあります
冷蔵庫を買い換えるのだって「温暖化対策」
(「みんなで考えよう地球の未来」トークショー 「公益財団法人淡海環境保全財団」提供)
では、温暖化対策として私たちは何をすればいいのでしょうか。山中さんは「緩和策と適応策、2つの側面からの対応が大切です」といいます。「緩和策」とは、温室効果ガスを減らして温暖化の進行を緩やかにする対策のこと。「適応策」は、温暖化による影響に備えることを指します。「一人ひとりが身近なことから行動を変える『緩和策』に取り組むと同時に、温暖化に対応するための備えをする『適応策』を考え、取り入れる。その両方をすすめることが重要です。『緩和策』と『適応策』を両輪として推進していくことが、未来の温暖化防止へと繋がります」
「緩和策」については、「省エネルギー」「再生可能エネルギーの活用」「森林による二酸化炭素の吸収」「二酸化炭素の回収・蓄積」などが考えられます。個人や家族、職場などで取り組むことができるのは、「省エネ」でしょう。
「使わない時はこまめに電気を消す」「エアコンの温度を適切に設定する」「クルマを使う頻度を減らしたり、エコカーへの乗り換えを行う」など、すでにみなさんが取り組まれている事象も多いのではないでしょうか。
しかしこれまで以上に厳しく温暖化対策を行う必要があります。生活を見直し、さらに取り入れられる対策はないか、それぞれがより一層の対策を行っていかなければなりません。
「緩和策の取り組みは、我慢や不便を強いるものばかりではありません」と山中さん。「たとえば、古い電化製品を新しいものに買い換えるだけでも対策になります。中でも冷蔵庫は使用電力が多いので、買い替えによる節電効果も高くなります」
24時間365日使う冷蔵庫。使用電力は各家庭の電気使用量の14%以上を占めるともされます。8年前と比べて省エネ効率が50%以上もアップしたものもあり、冷蔵庫の買い替えによる節電効果は非常に大きくなりました。家族が増えたり、生活が変わったりと、現在の冷蔵庫に不満が出てきている人には、大いに買い替えの余地がありそうです。
「電化製品を買い換えるときには、『省エネ性能ラベル』を確認し、星マークが5つ星のものを選んでください」と山中さん。日常生活のなかで常に「エコ」や「省エネ」を意識することで、小さな一歩を踏み出すことが重要です。
ほかにも、家や職場の灯りのLED化や給湯器システムの見直しも効果が高い施策の一例。生活の便利さはそのままに保ち、もしくはより便利にしたうえで、省エネによってランニングコストを安くして、もちろん環境負荷も減らす。何かを選択するときには、「地球にもお財布にも優しい」を考えてみてください。
おいしいお米「みずかがみ」を食べて環境対策
(公益財団法人淡海環境保全財団滋賀県地球温暖化防止活動推進センター技術アドバイザー 山中直さん)
もうひとつの温暖化対策。さらなる温暖化に備える「適応策」にはどのようなものがあるのでしょうか。温暖化が原因と見られる大雨や台風の直撃が近年各地で発生しています。自然災害によって生じる河川の氾濫や土砂災害に備え、川幅を拡幅し、より高い堤防を整備することや、滋賀県洪水ハザードマップでどこが浸水しやすいかを把握し、避難経路を前もって知っておくことも対策のひとつですし。
さらに、気象の変化にともない、従来の作物が育ちにくくなる可能性もあります。品種改良や栽培方法の工夫により、将来の温暖化への適応が求められているのです。
「滋賀県が開発したお米『みずかがみ』も、適応策のひとつなんですよ」と山中さんに教えていただきました。気温が高くてもよく育つ「みずかがみ」は滋賀で盛んに栽培されるようになっています。単に温暖化でも作れるというだけでなく、米の食味ランキングで「特A」になるなど味もよく、冷めてもおいしいのでお弁当にも向くとして人気の品種。滋賀のみならず全国で「みずかがみ」のような品種が開発されています。
温暖化の適応策として誕生した農作物や商品を積極的に選ぶこともまた、温暖化対策の一助になるのかもしれません。
「温暖化は遠い未来の話ではありません。すでに始まっているものでもあります。また今のあなたの行動が、未来へと繋がっていきます。今から一人ひとりが温暖化や地球環境を意識して、行動を変えることが大切です」と山中さんは言います。
「皆さんそれぞれが家族、町内、学校、いろいろな側面からできることを考えて、実施してください。温暖化防止が県民全体のムーブメントとなり、さらに日本全体や世界へも広がれば、温暖化が抑制された最善の未来へと近づきます。まずは個人個人の努力から。今からすぐに『できること』をはじめてください」。
京都出身、滋賀に仕事で通ううちに滋賀に惹かれて彦根に移住。ライターをするかたわら、夫と「彦根の自転車店・侍サイクル( https://jitensyazamurai.com/db/ )」を経営。湖東・湖北を中心に、滋賀各地を自転車で走り、ついでに美味しいものを食べるのが何より幸せ
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